企業はモノやサービスをユーザへ提供し、モノの販売やサービスの使用料金でユーザからお金を巻き上げている。
いかに高品質で低コストなモノやサービスを提供することができるかが重要だと考える。
モノ、サービスそのものの価値だけではなく、値引きや限定品などといった「イツモトチガウお得感」がユーザの判断基準に大きな影響を与えるのも事実である。
さらに言えば、ユーザがサービスを選択する上での大きなファクターがある。「無料」である。
しかし、無料でビジネスは成り立つのか。お金の点は問題ない。
金の出所をユーザに求めるのではなく、他企業に金の出所を求めればいいのだ。
「0という数字には魔法がある」「0という概念を発見したインド人は素晴らしい」
0という存在するけど、存在しないものという概念は実はものすごく奥が深いのである。
まあ、ぶっちゃけ言って、この記事も会社の上司より今後のビジネスについて、アドバイスをもらったので書いてみたわけで、0から生まれたものではないのである。
高価格の100円のチョコレートと低価格の30円のチョコレートがある。
特売セールとして高価格の100円のチョコレートを50円引き、低価格の30円のチョコレートを5円引きで販売した。
その場合、多くのユーザの行動は、高価格のチョコレートを購入したと言う。
この決め手になったのが、「お得感」であった。
実際に購入しようとした時には50円と25円のチョコレートである。
50円のチョコレートを1つ買うのと、25円のチョコレートを2つ買うのは同額の50円である。
元の値段の差額を考えたユーザは、元の値段から50円お得になった高価格側のチョコレートを購入したのである。
デフレが続けば、企業としてはより低価格でユーザへ提供する必要がある。
元々低い価格で販売していたならば、高級品が値下げで勝負をかけてきたならば、「お得感」での勝負ではなすすべがない。
100円が40円引き、60円引、80円引、と値下げすることができても、元々30円であるならば、30円引以上はできないのである。
同額の値引きを行っていくのであれば、先に低価格側に限界が発生していく。
製造コストが10%だった場合、100円のチョコレートでは10円。うんこ味の30円のチョコレートは3円が必要である。
100円のチョコでは90円の値引きが可能であるのに対し、30円のチョコでは27円の値引きまでしか行うことができないのだ。
値引き額 | 高価格 | 低価格 |
原価 | 100円 | 30円 |
10円引き | 90円 | 20円 |
20円引き | 80円 | 10円 |
25円引き | 75円 | 5円 |
26円引き | 74円 | 4円 |
27円引き | 73円 | 3円 |
この時点で高価格側は63円の利益に対し、低価格側の利益は0円なのである。
一見、低価格側が不利な状態が続くが、値引きが30円となった時点で事態は変わる。
値引き額 | 高価格 | 低価格 |
原価 | 100円 | 30円 |
28円引き | 72円 | 2円 |
29円引き | 71円 | 1円 |
30円引き | 70円 | 0円 |
低価格側が0円での販売に切り替えることで、ユーザは一気に低価格側へシフトするのである。
うんこ味はさすがに厳しいかもしれないが、無料というのは、うんこくらいは跳ね返すインパクトがあるのだ。
値引き額 | 高価格 | 低価格 |
原価 | 100円 | 30円 |
30円引き | 70円 | 0円 |
40円引き | 60円 | 0円 |
50円引き | 50円 | 0円 |
60円引き | 40円 | 0円 |
70円引き | 30円 | 0円 |
80円引き | 20円 | 0円 |
90円引き | 10円 | 0円 |
奪われた顧客をとり返そうと高価格側は値引き額を増やしていく。
その後も高価格側は値引きが行われるが、低価格側の価格は0円のまま変わることはない。
値引き額 | 高価格 | 低価格 |
原価 | 100円 | 30円 |
100円引き | 0円 | 0円 |
100円引き……ここに来て、高価格側は低価格側と同様の「無料」という土俵にあがることになる。
同じ「無料」であるならば、品質の高い高価格側がユーザを手に入れることができるだろう。
しかし、高価格側はユーザを増やすことでさらに損が増えてしまうのである。
製造コストが10%だった場合、100円のチョコレートでは10円。うんこ味の30円のチョコレートは3円が必要である。
100円のチョコレートを100円で売れば90円の利益。うんこ味の30円のチョコレートは27円の利益となる。
しかし、どちらも無料で販売した場合、100円のチョコレートでは10円の損、うんこ味の30円のチョコレートは3円の損となる。
1枚ごとに7円の損。売れれば売れるほど、高価格側の損は増えていくのである。
無料という世界では、元々低価格であった方が勝つことができるのである。
無料という世界では、有から無へ変わることで、損が発生することはあっても単純に利益を得ることはできない。
利益に変えるには有から無へと変わったものを、再度、無から有へ変える必要がある。
(この辺は、突き詰めると生命観の話になっていくけど、主旨が違うので割愛。)
有から無への変化。それこそが有なのである。
無から有を生み出すもう1つの方法は、錬金術のようなものかもしれない。
無から得たものを別の世界へのインプットとして渡すことで、有のアウトプットを得る方法である。
(この世とか、あの世とか、そういう意味ではなくて……主旨が違うので割愛。)
ユーザには無料で提供。無料で提供して得た情報を別の企業へ売り込むってこと。
これで、チョコレート1枚当たりで5円の利益が出れば、低価格のチョコレートでも利益が生まれるってこと。