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少年Hを見た

少年Hを見た。
少年Hの純粋でまっすぐな心。
父の寛大な心と意志。
母の慈悲の心と行動。
優しさを継ぐ妹。

少年Hを観ての感想は人それぞれだとおもう。

宗教弾圧や思想の統制。
戦前から戦後の日本国の思想の乱れ。
大きな力に引っ張られる人心。
戦後の迷いと立ち上がろうとする人の意思。
感動した。

映画『少年H』公式サイト
http://www.shonen-h.com/
著者 妹尾河童  『少年H』(しょうねんエッチ)は、妹尾河童の自伝的小説。

妹尾肇       主人公。通称はH。(吉岡竜輝)
妹尾盛夫      肇の父親。洋服屋を営む。(水谷豊)
妹尾敏子      肇の母。熱心なクリスチャン。(伊藤蘭)
妹尾好子      肇の妹。(花田優里音)
オトコ姉ちゃん   映画技師で旅回りの役者。(小栗旬)
うどん屋の兄チャン うどん屋で働く青年。(早乙女太一)
田森教官      鬼教官。(原田泰造)
久門教官      教練射撃部の顧問。(佐々木蔵之介)

【ネタばれ含む】

たぶん、もう一回見たならば、違う感想を書くと思う。
この映画は難しい。

少年Hの自分の考えを貫く姿勢は正しいと思う。
アメリカと日本の国力の差を知った少年Hが戦争に勝てないことを語るのは正しいと思う。
少年Hの言葉を戒める父。

どんなに迫害を受けてもキリスト教を捨てずに祈り続ける母。
熱心なクリスチャンになった妻に他宗の神も認めるようにいう父。

家族の身を感じ父の考えも正しいと思う。

洋服店で海外の人とつながりがあったこと、キリスト教であることからスパイ容疑をかけられ
あらぬ拷問を受けた父。ボロボロになりながらも、自分の心を折らずに拷問を耐えた父。
嘘をつくこともできただろうに。
そんな状況下でスパイ容疑の原因を作った犯人の辛さまで少年Hに諭す父。
父かっこよすぎです。

国という巨大な力が誤った方向に進んでいる時に、反対するか迎合するか。
国家に反対したものは捕まり、思想の異なるものは不当な弾圧を受ける。
病弱な親を残し出兵する若者の迷いもわかる気がする。
国を守るために鬼となる憲兵の気持ちもわかる気がする。

ご飯が食べれず餓えた人への中途半端な同情が人を救うことではないという考えも正しいと思う。
一方で困った人へは慈悲の心で食べ物を恵む母の考えも正しいと思う。

常に助け続けることなんてできない。
中途半端な同情は相手を期待させて堕落させる可能性がある。
一方で助けなければ再起するチャンスなく死んでしまう。

このテーマも難しい。
自分の考えは、「自立できるように助ける」。
金がない場合に金をあげるのでなく、働き先を見つけてあげる。
もしくは、負担の少ない持続可能な方法で最低限の支援をする。
とっても難しいことだけど。

教鞭をふるっていた鬼教官。
地雷を持って敵戦車に突撃をする訓練をする中学生。

まともに考えて特攻なんて相手も自分も死ぬ相討ちの誰も得しない戦い方。
ただの犬死にならないだけの最後の作戦。

この映画で訓練されてた作戦は死んだ爺さんが実際に戦地で命令を受けたものである。
満州に行き、赤い血で染まった飯を食い、泥まみれ。
そんな中で、もし敵国の戦車がいたら地雷を持って突っ込むはずだったと。
じいさんの指は銃か、戦車砲で先っぽがなかった。
シベリアに抑留されて生き残ったのは体力と精神力があったからだと思う。
結局、人を殺したのか、戦地でどんな罪を犯したかは聞けずじまいだったけど。

そして戦後。
あれだけ国に忠誠を誓っていた鬼教官は、腰の低い質屋をやっていた。
殴っていた生徒にこびへつらい、プライドのかけらもない。

国に操られていた教官。真面目だからこそ国のためにつかえていたのか。
保身のために国のためにつかえていたのか。
大きな力に流されていた、少年Hが言った「ワカメのよう」。鋭い観察眼だったと思った。

今までの巨大な力が無くなり、新しい別の力が動き出した。
今まで流れに身を任せていた人は、どうしていいかわからなかった。
海に浮かぶ自分の船に梶もなくエンジンにないことに気が付いたんだろう。

ただその一方で、全てが無くなった世界から、よみがえろうとする強い心も感じた。
鬼教官も、別の教官も、近所のおじさんも生きるために必死だった。
戦後のほうが生き生きとしていたのは、彼らが本当の姿をだせたからかもしれない。

誤っているのは人たちではない。
戦時中、国の迷い、大失態が結果的に民に不幸を招いた。
連戦連勝の小国が我を見失っていたんだと思う。

国のために民が命を捨てる。
間違っている。民のために国があるべきなのに。
国構えの中は、王ではなく民であるべき。
囲って守るべきは民であるべき。

精神論で乗り切ろうとする考え。
そこに何の作戦もない。考えた末に策がないから精神論が出てきたんだろう。
たしかに、精神論は重要。でも、精神論を維持するにはきちんとした策がなければ維持はできない。

思想統一とかいう考えがそもそもの間違い。
映画の中で父親が言っていた「いろんな考え方がある」
その通りだと思う。

ただ、戦争中に反対したら、捕まるのは必至。
正義を貫くことは正しい。でも、一方で死んでしまっては意味がない。
この葛藤は、たぶん、当事者になってみなければわからないだろう。
戦時中に自分の信念や正義を貫き、死んでいった人が多いことを知っている。

戦争時に、武器を捨てて対話して、どうにか切り抜けれるわけがない。
対話できるのは勝っている、強いほうが持ちかけることができる選択肢だ。
負けているほうは対話ではなく、降伏の選択肢のみ。
正しい選択肢のない中でどれも選んでもハズレなのは当たり前。

そうなる前に防ぐしかない。
外交だけでなく、仕事でもそうだけど、手遅れになる前に手を打つ。
手遅れになって、策を出して精神論だしたって解決することはない。手遅れなんだから。

一歩先を見ること。その一歩先の希望を見つけること。
その必要性を少年Hを観て感じた。

About arison

大都会岡山の南部にある玉野市生まれ。 大都会岡山のIT会社(目標は大都会No.1)でコンピュータとお客を相手に日夜格闘中。 関東出張中はグルメブログ。 基本的に遊び人のおっさん。 ライフハックとガンダム好き。ギガフロート玉野を浸透中。

31. 8月 2013 by arison
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